「うちの会社でも、社員がこっそりChatGPTを使っているかもしれない」
「シャドーAIという言葉は聞くけれど、実際どんなトラブルになるのかわからない」
生成AIの業務利用が広がる一方で、会社が把握していないAI利用、いわゆる「シャドーAI」への不安を感じ始めた方は多いのではないでしょうか。
放置していると、情報漏洩やコンプライアンス違反につながり、会社の信用そのものを傷つけかねません。 そこでこの記事では、実際に起きたシャドーAIのトラブル事例と、そこから見えてくるリスク、そして今日から着手できる対策を解説します。
【この記事でわかること】
・シャドーAIとは
・海外で実際に起きたトラブル事例
・シャドーAIが引き起こすリスク
・企業が実施すべき対策
自社のAI利用ルールに少しでも不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
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この資料でわかること
- 中小企業のサイバー攻撃リスク
- 情報漏えい、踏み台攻撃被害を防ぐ対策の基本
- 放置すると起こる実際の被害事例
- 自社の弱点がわかる15項目のチェックリスト
シャドーAIとは?シャドーITとの違いと増加の背景
シャドーAIとは、企業が承認・管理していない生成AIツールを、従業員が個人の判断で業務に使ってしまう状態のことです。
似た言葉に「シャドーIT」がありますが、両者には明確な違いがあります。 また、なぜ多くの企業でシャドーAIが増えているのか、その背景も押さえておきましょう。
【この章でわかること】
・シャドーAIの定義
・シャドーITとの違い
・代表的なシャドーAI
・シャドーAIが増えている3つの背景
シャドーAIの定義
シャドーAIとは、次のような状態を指します。
【シャドーAIの特徴】
・会社が把握・許可していない生成AIサービスを、従業員が自己判断で仕事に使う
・ChatGPT、Gemini、Claudeなど有名なツールでも、会社の承認を得ない個人アカウント利用はすべて該当する
会社の許可を得ず、業務で利用しているAIサービスがシャドーAIです。生成AI自体は誰でも簡単に使えるため、知らない間に社内でシャドーAIが増えている可能性があります。
シャドーITとの違い
シャドーAIは、以前から知られている「シャドーIT」の生成AI版と考えると理解しやすくなります。シャドーITとは一言でいうと、「社員が会社の許可を得ずに、業務で勝手に使うIT機器やクラウドサービスのこと」です。
| 項目 | シャドーIT | シャドーAI |
|---|---|---|
| 主な対象 | 個人のスマホ、Googleドライブ、LINE、Dropbox、未承認のSaaSなど | ChatGPT、Claude、画像生成AI、未承認のAI搭載ツールなど |
| ユーザーの目的 | 「データの共有を楽にしたい」「使い慣れたツールで仕事がしたい」 | 「文章やコードを自動生成したい」「アイデア出しや要約を効率化したい」 |
| 主なリスク | 端末の紛失、データの漏洩、アカウントの乗っ取り | 機密データのAI学習への流用、不正確な情報の出力(ハルシネーション) |
シャドーITとシャドーAIは、使用するツールは違いますが、目的やリスクは同じようなものです。
代表的なシャドーAI
シャドーAIとひとくちに言っても、業務で使われやすいツールはいくつかのジャンルに分かれます。
| ジャンル | 代表的なツール | 使われる場面 |
|---|---|---|
| チャット型の生成AI | ChatGPT、Gemini、Claude、Copilotなど | 文章作成・要約・アイデア出し |
| 翻訳系の生成AI | DeepL、Google翻訳の生成AI機能など | 海外とのメールやドキュメントの翻訳 |
| 文字起こし・議事録作成AI | Otter.ai、Nottaなど | 会議の自動記録 |
| 画像・資料作成AI | Canva AI、Adobe Fireflyなど | 資料や画像の作成 |
| コード生成AI | GitHub Copilot、Cursorなど | プログラム開発の効率化 |
いずれも個人アカウントで気軽に始められる分、会社の管理が及ばないままシャドーAI化しやすいジャンルといえます。
シャドーAIが増えている3つの背景
総務省の「令和7年版情報通信白書」によると、何らかの業務で生成AIを利用している国内企業の割合は55.2%にのぼります。
出典:総務省「令和7年版情報通信白書」
急速に普及した背景には、次の3つの理由があると考えられます。

AIは手軽に登録できて、業務を効率よく進められる便利なツールです。そのため社内のルール整備がされていないと「そもそもリスクがあるツール」との認識がないまま利用してしまう可能性もあります。
「生成AIの業務利用を禁止している」「社員が自由に生成AIを使っているが管理していない」このような状態であれば、AIによるトラブルが起こる可能性があります。
まずは、アンケートを取る、AIサービスへのアクセスログを確認するなど、社内の状況を把握しましょう。
アクセスログの確認には、UTMもおすすめです。

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シャドーAIが引き起こしたトラブル事例
「実際にどんなトラブルが起きているのか」を知ることは、対策を考えるうえで重要です。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織編の3位に初めて選出されました。 これは、2025年に国内でも同種のインシデントが相次いだことの表れといえます。
一方で日本国内では、具体的な事例が少ないため、ここでは海外の事例を見ていきましょう。
【事例の一覧】
・Vercel社|会社が把握していなかった外部AIツールへの権限付与が侵害の起点に
・米国法律事務所|ChatGPTの出力を検証せず提出し裁判所から制裁
・カナダの病院|退職済み医師の無断AIツールが患者情報を漏洩
Vercel社|会社が把握していなかった外部AIツールへの権限付与が侵害の起点に
Vercel社は、Webサイトやアプリの開発・公開基盤(クラウドホスティングサービス)を提供する米国企業です。この事例は、会社が契約・審査していなかった外部AIツールに広範な権限を与えていたことがきっかけで、トラブルに発展しました。
【この事例の流れ】
・従業員が、会社として契約・審査していなかった外部AIツール「Context.ai」を個人の判断で利用
・Context.aiに対してGoogle Workspaceの広範な権限(すべて許可)を付与してしまう
・2026年2月、Context.ai側がマルウェアに感染したことをきっかけに侵害が発生
・2026年4月、この侵害を通じて攻撃者が盗んだ権限を悪用し、Vercelの社内システムへ不正アクセスし、データの一部が流出
会社が把握・管理していない外部AIツールに、広範な権限を与えてしまったことが、情報漏洩につながりました。
米国法律事務所|ChatGPTの出力を検証せず提出し裁判所から制裁
米国の法律事務所の事例は、ChatGPTの出力を検証せずに信じてしまったことがトラブルの引き金になったケースです。
【この事例の流れ】
・2023年、弁護士が訴訟資料の作成にChatGPTを使用
・ChatGPTが生成した文章をそのまま裁判所に提出
・その文章には実在しない判例が複数引用されていた
・虚偽の引用が発覚し、連邦地方裁判所から罰金などの制裁を受けた
組織のチェック体制を通さずに個人の判断でAIが使われると、出力を検証する人がいないまま業務に使われてしまいます。今回のケースも、その状態でAIの誤った出力がそのまま提出されたことがトラブルの引き金になりました。
カナダの病院|退職済み医師の無断AIツールが患者情報を漏洩
カナダの病院の事例は、個人の無断利用と、退職者管理という組織側の抜け漏れが重なったケースです。
【この事例の流れ】
・2024年、カナダ・オンタリオ州のある病院で、退職済みの医師が個人契約のAI文字起こしツールを利用
・病院の規定に反し、個人のメールアドレスを会議の招集リストに残したままにしていた
・無断契約していたAIツールにカレンダー連携権限を与えており、退職後もツールが会議に自動参加
・患者7名分の氏名や病歴などを記録・外部送信していたことが発覚
この事案は、オンタリオ州の情報プライバシーコミッショナー(IPC)が調査を行い、退職者のアカウント管理体制の不備として勧告を出しています。
ここまで3つの事例を見てきましたが、共通しているのは「無断で使った」かどうかよりも、組織が把握していないところでAIツールが動いていたという点です。
こうした「見えないAI利用」に気づき、対策を打つためには、自社のセキュリティ体制を一度棚卸しするのがおすすめです。何から手をつければよいかわからない方は、下記の資料もあわせてご活用ください。
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中小企業のサイバーセキュリティ対策を、1冊に

「何から始めれば」と調べてみても専門用語ばかり。
最低限おさえたいポイントをこの1冊にまとめました。

この資料でわかること
- 中小企業のサイバー攻撃リスク
- 情報漏えい、踏み台攻撃被害を防ぐ対策の基本
- 放置すると起こる実際の被害事例
- 自社の弱点がわかる15項目のチェックリスト
シャドーAIが引き起こすリスク
シャドーAIは紹介した事例以外にもリスクがあります。
【この章で紹介するリスク】
・機密情報・個人情報が漏洩する
・ハルシネーションによる誤情報が拡散する
・著作権・知的財産を侵害する
・コンプライアンス・法規制違反につながる
・サイバー攻撃に悪用される
機密情報・個人情報が漏洩する
シャドーAIのリスクの中でも深刻なのが、機密情報や個人情報の漏洩です。個人情報保護委員会でも、個人情報を含むプロンプト入力について注意喚起を公表しています。
【機密情報・個人情報が漏洩する理由】
・入力内容がAIの学習に利用される
・学習に取り込まれた情報が、別のユーザーへの回答として出力される
情報が漏洩する主な原因は、AIの「学習機能」にあります。無料版や個人向けの生成AIでは、この学習機能が初期設定でオンになっているケースが多いため要注意です。
ハルシネーションによる誤情報が拡散する
生成AIには、事実と異なる内容を、もっともらしく生成してしまう「ハルシネーション」という特性があります。
【ハルシネーションが問題になるポイント】
・会社に隠れて使うため、社内の適切な確認ルールを通らないまま、間違ったデータが業務に使われる
・事例の弁護士のように、架空の情報を検証せず提出するとトラブルに発展する
・「AIの出力はあくまで下書き」という意識を組織全体で共有できない
業務で利用する場合、ハルシネーションにはより注意を払わなくてはいけません。ところが、隠れてAIを利用する場合、適切なダブルチェックができない可能性があります。
著作権・知的財産を侵害する
生成AIは、インターネット上の大量の文章やコードを学習して回答を作ります。
【著作権・知的財産侵害が起こる仕組み】
・出力された文章やコードが学習元の著作物と似てしまい、著作権侵害につながるおそれがある
・自社の営業戦略や設計情報を個人向けサービスに入力すると、学習データに取り込まれる可能性がある
・取り込まれた情報が、間接的に競合他社へ伝わってしまうリスクもゼロではない
自社だけが知っているはずの情報が、AIを介して外部に伝わりかねない点は、見落とされがちなリスクです。
コンプライアンス・法規制違反につながる
シャドーAIの利用は、社内ルール違反だけで終わらず、複数の法規制に抵触するおそれがあります。
| 規制 | 具体的な問題 | 違反した場合の影響 |
|---|---|---|
| 個人情報保護法 | 本人の同意を得ずに顧客の個人情報を生成AIへ入力すると、「第三者提供」に該当するおそれがある | 個人情報保護委員会からの指導・命令、社名公表による信用低下 |
| 業界特有の規制(金融・医療など) | 顧客の取引情報や患者の診療情報を外部のAIサービスに送信すること自体が、業界の規制に触れるおそれがある | 監督官庁からの行政処分 |
| EU AI Act(海外展開している企業) | AIのリスクに応じた管理体制の整備が義務付けられている | 是正命令や罰則の対象になる可能性 |
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」も、こうした規制に対応するためのリスクアセスメントとガバナンス整備の重要性を示しています。 つまり、「社内ルールを破っただけ」では済まず、法律違反として会社が責任を問われる可能性があるということです。
AIがサイバー攻撃に悪用される
シャドーAIは攻撃者に悪用される入り口にもなります。
【悪用されるパターン】
・生成AIブームに乗じたフィッシング目的の偽AIサービス
・AIツールを装った悪質な拡張機能
・マルウェア感染によるAIツールの乗っ取り
「便利そうだから」という理由だけで未承認のツールを導入すると、攻撃者の侵入経路を作ってしまいます。
AIを悪用した、サイバー攻撃に備えて基本的なセキュリティ機器の導入も検討してみてください。
この記事に関連するサービス
企業が実施すべきシャドーAI対策
シャドーAIのリスクを理解したところで、次は対策に移りましょう。
業務利用を禁止するのではなく、ルールを整え、ツールを導入するのがおすすめです。
【対策の一覧】
・利用実態の把握
・AI利用ガイドライン・入力禁止情報の策定
・企業向けAIツールの導入
・退職者・異動者アカウントの管理徹底
・全従業員向けのAIリテラシー教育
・AIガバナンス委員会の設置・運用
利用実態の把握
まずは、社内でAIツールが使われているかを把握する必要があります。
【把握する方法】
・社内からのAIサービスへのアクセスログを確認する
・端末にインストールされているアプリを確認する
・従業員へのアンケートで、利用実態を直接確認する
重要なのはアンケートの取り方です。シャドーAIのリスクや今後どのようにAIを導入するのか丁寧に説明することで、より正確性の高いアンケートを取れます。
AI利用ガイドライン・入力禁止情報の策定
並行して行いたいのが、AIを利用する際のガイドラインの作成です。AIを業務で利用するにあたって、情報漏洩が起こらないようにルールを作りましょう。
【ガイドラインに盛り込む4項目】
・利用を承認するAIツールの一覧
・AIへの入力が禁止される情報のカテゴリー(機密情報・個人情報など)
・AIの出力を確認するレビュー手順
・違反時の報告方法と対応フロー
禁止事項だけを伝えると、かえって隠れて使われる原因になるため、代替手段とあわせて周知する必要があります。
企業向けAIツールの導入
ガイドラインを整備したら、AIを安全に使える環境もあわせて用意しましょう。
【導入時のポイント】
・ChatGPT EnterpriseやAPI版など、学習オプトアウトが可能な法人向けプランに切り替える
・個人向けの無料版に頼らざるを得ない状況を解消する
自社でAIを導入することで、そもそも隠れてAIを使う必要がなくなります。
退職者・異動者アカウントの管理徹底
カナダの病院のケースが示すとおり、退職者・異動者のアカウント管理は見落とされがちな対策です。
【管理徹底のポイント】
・退職・異動のタイミングで、AIサービスを含む各種アカウントを一括無効化する(自動デプロビジョニング)
・情報システム部門と人事部門が連携し、退職・異動のフローに無効化の手順を組み込む
アカウントの放置は、本人に悪意がなくても、時間差でトラブルにつながることがあります。
AIに限らず、退職者による情報漏洩は対策しておく必要があります。事例や対策については、以下のページも参考にしてください。
全従業員向けのAIリテラシー教育
技術的な対策だけでは、従業員の理解が伴わなければ効果は限定的です。
【教育で押さえる3点】
・何を入力してはいけないかを明確にする
・代わりに使えるツールを提示する
・AIの出力は必ず人が確認するという原則を徹底する
悪意のない善意の行動がトラブルを招くこともあるため、他社の実例を共有することは効果的な教育手段になります。
AIガバナンス委員会の設置・運用
最後に取り組みたいのが、継続的にルールを見直す体制づくりです。
【運用のポイント】
・法務、コンプライアンス、情報システム、人事を横断した「AIガバナンス委員会」を設置する
・ポリシーの更新や新しいAIツールの審査を定期的に行う
生成AI技術は変化が速いため、一度作ったルールを固定してしまうと、すぐに実態と合わなくなってしまいます。
また、AIに限らず企業のセキュリティ対策は、必要不可欠です。ぜひ以下の資料を参考に自社のセキュリティ対策を見直してみてください。
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「何から始めれば」と調べてみても専門用語ばかり。
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- 放置すると起こる実際の被害事例
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よくある質問
最後にシャドーAIについてよくある質問を紹介します。
Q1.シャドーAIとシャドーITの違いは何ですか?
シャドーITは会社に無断で未承認の機器やクラウドサービスを使うこと全般を指し、シャドーAIはその中でも生成AIやAI搭載ツールを無断で利用し、入力データの学習流用などのリスクを生じさせる行為を指します。
Q2.シャドーAIはなぜ企業で増えているのですか?
申請よりも使い始める方が早いという手軽さ、現場の前向きな動機、会社側のルール整備の遅れが重なって発生しやすくなっています。
Q3.個人でシャドーAIを使った場合、罰則はありますか?
就業規則違反として懲戒対象になるほか、機密情報の第三者提供にあたれば会社の法的責任にもつながります。海外では無断利用が裁判所の制裁に発展した例もあります。
Q4.中小企業でもシャドーAI対策は必要ですか?
専任の情報システム担当者がいない中小企業ほど利用実態を把握しづらいため、可視化とガイドライン整備から着手する必要性は高いといえます。
まとめ
この記事では、シャドーAIの事例とリスク、対策について解説しました。
AIが業務に利用されているか把握できていない状態を放置すると、情報漏洩などのトラブルに発展する可能性があります。
まずは、自社の生成AI利用について見直してみてください。また、生成AIだけでなくセキュリティ対策も企業には必要不可欠です。
「そもそもアクセスログの確認方法がわからない」「しばらくセキュリティ機器を見直していない」という場合は、ぜひUTMやウイルス対策ソフトの導入も検討してみてください。

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