物流業界のサイバー攻撃事例|狙われる理由と対策を解説

「物流停止のニュースを見て、自社も止まったらと不安になった」
「物流がサイバー攻撃で狙われやすいと聞くけれど、何から対策すればいいのかわからない」

物流のデジタル化が進む一方で、こうした不安を抱える経営者や情報システム担当者は少なくありません。

しかし、放置してしまうと、物流は止まった瞬間に納品遅延や機会損失が発生し、その影響は取引先や社会全体にまで波及します。

実際に、物流業界を狙ったサイバー攻撃は国内でも発生してきました。

そこでこの記事では、以下の内容を解説します。

自社のセキュリティに少しでも不安がある方は、ぜひ対策を見直してみてください。

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  • 中小企業のサイバー攻撃リスク
  • 情報漏えい、踏み台攻撃被害を防ぐ対策の基本
  • 放置すると起こる実際の被害事例
  • 自社の弱点がわかる15項目のチェックリスト

物流業界を狙うサイバー攻撃の現状

物流業界にとってサイバー攻撃は、最優先で備えるべき経営リスクになっています。その理由について、この章で現状を確認しておきましょう。

【この章でわかること】
・ランサムウェア被害が高水準で発生している
・IPAが警告する組織向けの脅威も物流業界に影響する
・国も物流・港湾のセキュリティ強化を求めている

ランサムウェア被害が高水準で発生している

現在サイバー攻撃の主流となっているのが、データを暗号化し引き換えに身代金を要求する「ランサムウェア」です

物流に限らず国内企業へのランサムウェア被害が、高い水準で推移しています。

ランサムウェアに感染すると

警察庁の調査によると、令和6年(2024年)のランサムウェア被害報告は222件にのぼりました。

会社の規模に関わらず幅広い業種がランサムウェアの被害に遭っていることがわかります。

IPAが警告する組織向けの脅威も物流業界に影響する

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として次の項目が上位に並びました。

順位脅威物流業界との関わり
1位ランサム攻撃による被害システム停止で出荷・在庫管理が止まる
2位サプライチェーンや委託先を狙った攻撃取引網の広い物流は踏み台にされやすい
3位AIの利用をめぐるサイバーリスク(初選出)生成AIの業務利用拡大にともなう新たな懸念

とくに1位と2位は物流業界にも影響が出やすい脅威です。直接的な攻撃の対象にも、間接的に被害を受ける対象にもなる可能性があります。

国も物流・港湾のセキュリティ強化を求めている

物流は、国が守るべき重要インフラの一つです。国土交通省も港湾・物流分野を対象にした情報セキュリティのガイドラインを整備し、事業者に対策を求めています。

物流のサイバーセキュリティは一企業の努力目標ではなく、社会インフラを守る責務として位置づけられているのが実情です。

小規模な運送会社や倉庫業であっても、セキュリティ対策には目を向ける必要があります。

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物流業界がサイバー攻撃に狙われやすい理由

物流業界が標的になりやすい理由について見ていきましょう。

【この章でわかること】
・24時間稼働を止められない
・サプライチェーンの踏み台にされやすい
・大量の個人情報・取引データを保有している
・中小・多重下請けで対策が手薄になる

24時間稼働を止められない

物流の現場は、24時間365日動き続けることを前提に組まれています。

システムが一瞬でも止まると被害が一気に膨らむため、攻撃者に足元を見られやすいです。

「稼働を止められない」「判断が遅れると被害が拡大する」ため、身代金を要求してくるランサムウェアに狙われやすくなります。

サプライチェーンの踏み台にされやすい

物流は多くの荷主や取引先とネットワークでつながっているため、攻撃の入り口として狙われます。

これはIPAが2位に挙げた「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」そのものです。

サプライチェーンの踏み台にされやすい

そのため、自社の対策不足が取引先への加害につながりかねない点に注意が必要です。

大量の個人情報・取引データを保有している

物流企業は、外部に漏れると影響の大きいデータを大量に扱っています。

配送先の氏名・住所・電話番号、荷主の商品情報や在庫、配送ルートなど、機密性の高い情報が集まる場所だからです。

こうしたデータは、暗号化と暴露をあわせて脅す「二重恐喝(ダブルエクストーション)」の標的になりやすいのが特徴です。 実際に警察庁のデータでは、手口を確認できた被害のうち82.8%が二重恐喝によるものでした。

中小・多重下請けで対策が手薄になる

物流業界は中小事業者や多重下請けの構造が多く、対策が行き届きにくい傾向があります。

専任のセキュリティ担当を置きにくく、古い機器や使い回しのパスワードが残りやすいためです。

要因が重なることで、物流業界は攻撃者にとって「狙う価値が高く、成功しやすい」標的になっているのです。

物流業界で実際に起きたサイバー攻撃の事例

ここからは、物流業界で実際に起きたサイバー攻撃の事例を紹介します。

【この章で紹介する事例】
・名古屋港|物流が約3日停止したランサムウェア被害(2023年)
・関通|事業停止約50日・被害額約17億円(2024年)
・アスクル|物流システム停止と約72万件の情報流出(2025年)
・ニチレイ|冷蔵倉庫・冷凍食品の出荷業務が停止(2026年)

名古屋港|リモート機器の脆弱性を突かれ、物流が約3日停止(2023年)

最初の事例は、日本最大級の貿易港である名古屋港で2023年7月に起きたランサムウェア被害です。

港内の5つのコンテナターミナルを一元管理する「名古屋港統一ターミナルシステム(NUTS)」が攻撃を受け、コンテナの搬出入が停止しました。

項目内容
発生時期2023年7月
攻撃の種類ランサムウェア(LockBitによるものとされる)
被害内容NUTSの全サーバーが暗号化され、コンテナ搬出入が中止
復旧まで約3日
侵入経路リモート接続機器の脆弱性が突かれたとみられる

国内有数の港湾で、リモート機器の脆弱性を突かれてシステムが暗号化され、コンテナの搬出入が約3日止まった事例です。 バックアップにも被害が及んで復旧に時間がかかった点が、大きな教訓として残りました。

物流代行の関通|ランサム「Akira」で基幹システム停止、事業停止約50日・被害額約17億円(2024年)

2つ目は、物流アウトソーシング大手・株式会社関通が2024年9月に受けたランサムウェア被害です。

在庫管理を含む基幹システムが停止し、物流事業が長期間にわたって止まる事態に発展しました。

項目内容
発生時期2024年9月
攻撃の種類ランサムウェア「Akira」
被害内容基幹・在庫管理システムが停止、第三者による不正アクセスを確認
事業への影響物流事業が約50日にわたり停止、被害額は約17億円規模
復旧対応全システムを廃棄し、環境をゼロから再構築

物流アウトソーシング大手が基幹システムを失い、事業が約50日にわたって止まり、被害額は約17億円規模に達した事例です。 最終的に全システムをゼロから作り直すことになり、一度止まった物流を立て直すことがいかに大きな負担になるかを示しました。

アスクル|ランサムウェアで物流システムが停止、約74万件の個人情報流出(2025年)

3つ目は、通販・物流のアスクルが2025年に受けたランサムウェア被害です。

主に物流システムに障害が発生し、自社だけでなく受託していた他社の物流業務まで止まりました。

項目内容
発生時期2025年10月
攻撃の種類ランサムウェア
被害内容物流システムを中心に障害が発生し、受託先の物流業務も停止
発生原因一部の業務委託先に付与していた管理者アカウントで、多要素認証が適用されておらずID・パスワードが漏えいした
情報流出後の調査で約74万件超の個人情報流出を確認
参考:読売新聞オンライン「アスクル、ウイルスは侵入から4か月後に起動…顧客や従業員の個人情報74万件の流出確認

オンライン上でバックアップを取っていたものの、ランサムウェア攻撃を想定した隔離環境ではなく、バックアップデータ自体も暗号化されたため、復旧に時間を要しました。

物流の停止が委託元や取引先にまで波及する、サプライチェーン攻撃の怖さを示す典型例です。

ニチレイ|サイバー攻撃で冷蔵倉庫・冷凍食品の出荷業務が停止(2026年)

4つ目は、冷凍食品・低温物流大手のニチレイが2026年7月に受けたサイバー攻撃です。

システム障害を検知した同社はグループのシステムを遮断し、その影響で冷蔵倉庫の入出庫や冷凍食品の出荷業務が止まりました。

項目内容
発生時期2026年7月
攻撃の種類サイバー攻撃(不正アクセス。ランサムウェアかは調査中と説明)
被害内容システム遮断により、ニチレイロジグループの冷蔵倉庫入出庫とニチレイフーズの冷凍食品出荷が停止
波及範囲一部の外食店舗、地域の生協、学校給食などへの納品が遅延
情報への影響一部サーバーに個人情報が保管されており、漏えいの可能性を報告
参考:日経新聞「ニチレイ不正アクセス、外食・通販・給食で配送遅れ 取引先は5000社

冷凍食品・低温物流の大手がシステム遮断を余儀なくされ、冷蔵倉庫や冷凍食品の出荷が止まった事例です。

その影響は外食チェーンの食材供給にまで広がり、コールドチェーンの停止が生産から店舗まで連鎖することを浮き彫りにしました。

できる限りのセキュリティ対策を行っていても、被害に遭ってしまうのがサイバー攻撃です。

そのため重要なのは、定期的にセキュリティ対策を見直し、万が一被害に遭ったときにも対応できるように準備することです。

いま、セキュリティ対策に不安があるのであれば、ぜひ一度社内の状況を確認してみてください。

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物流企業が実施すべきサイバー攻撃対策7選

物流企業が着手すべきサイバー攻撃対策を7つ紹介します。

自社の状況に合わせて、できるところから取り組んでみましょう。

【物流企業が実施すべき7つの対策】
・VPN機器・リモート接続の脆弱性対策
・UTMでネットワークの出入口を守る
・セキュリティソフトでPC・サーバーを守る
・3-2-1ルールに基づくバックアップと復旧体制
・退職者・委託先アカウントの管理徹底
・従業員へのセキュリティ教育
・国交省ガイドラインに沿った体制・インシデント対応の整備

VPN機器・リモート接続の脆弱性対策

まずは、VPN機器やリモート接続の脆弱性対策を行いましょう。

なぜなら、これらがランサムウェアの主要な侵入経路になっているからです。 警察庁の令和6年の調査では、感染経路のうちVPN機器が55.0%、リモートデスクトップが31.0%を占めました。

まずは、自社で使っているVPN機器の型番と更新状況を確認するところから始めてください。

UTMでネットワークの出入口を守る

社内ネットワークの出入口を守る手段として、UTMの導入が有効です。

UTMはファイアウォールやアンチウイルス、不正侵入防止などの機能を一台にまとめ、外部との通信を監視・遮断してくれます。

とくに情報システム担当を兼任している物流企業にとって、入り口をまとめて守れるUTMは現実的な選択肢といえます。

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セキュリティソフトでPC・サーバーを守る

入り口対策とあわせて、PCやサーバー側の守りも固める必要があります。

万が一侵入された場合でも、端末の不審な挙動を検知・隔離できるEDRやセキュリティソフトが被害の拡大を防ぎます。

「入れさせない」入り口対策と「広げさせない」端末対策の両輪で守るのがコツです。

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3-2-1ルールに基づくバックアップと復旧体制

ランサムウェアに備えるうえで、バックアップと復旧体制の整備は欠かせません。名古屋港の事例のように、バックアップまで暗号化されると復旧が大きく遅れてしまうためです。

そこで目安になるのが、データの守り方を示した「3-2-1ルール」です。 大切なデータを「3つの複製・2種類の媒体・1つは切り離して保管」という考え方で守る方法を指します。

要素内容
3つの複製元データに加え、2つ以上のバックアップを持つ
2種類の媒体異なる媒体(クラウドと外付けなど)に分けて保存する
1つはオフライン少なくとも1つはネットワークから切り離して保管する

さらに、定期的に復旧テストを行い、実際に事業を再開できるかを確認しておくことが事業継続(BCP)の要になります。

退職者・委託先アカウントの管理徹底

見落とされがちなのが、退職者や委託先のアカウント管理です。

不要になったアカウントや過剰な権限は、そのまま侵入口として悪用されるおそれがあります。

とりわけ取引先の多い物流業界では、社外に開いた権限の管理が全体の安全を左右します。

退職者の情報漏えいについては、以下のページもご覧ください。

退職者による情報漏洩事例まとめ|損害賠償や対策を解説

従業員へのセキュリティ教育

技術的な対策だけでなく、従業員一人ひとりの意識を高めることも重要です。

多くの攻撃は、不審メールの開封や偽サイトへの情報入力といった、人の行動をきっかけに始まるからです。

現場のドライバーや倉庫スタッフまで含めて周知することで、組織全体の守りが底上げされます。

国交省ガイドラインに沿った体制・インシデント対応の整備

最後に、平時と有事の両面から体制を整えておきましょう。

名古屋港の教訓が示すように、事前に対応手順を決めておくかどうかで、被害の大きさと復旧の速さが変わります。

なお、UTM・EDR・セキュリティスイッチを組み合わせた多層防御は、専任担当が少ない物流企業ほど効果を発揮します。 自社にどの対策が必要か判断に迷う場合は、無料相談などの専門窓口を活用してみてください。

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物流のサイバー攻撃についてよくある質問

最後に、物流のサイバー攻撃についてよくある質問を紹介します。

Q1.物流業界がサイバー攻撃で狙われやすいのはなぜですか?

24時間稼働で止められない事業構造、サプライチェーンの踏み台にされやすい立場、個人情報や取引データを大量に持つこと、そして中小・下請けで対策が手薄になりやすいことが重なるためです。 攻撃者はこうした物流特有の弱点を突いて、身代金を得やすい標的として狙ってきます。

Q2.中小の運送会社や倉庫でもサイバー攻撃対策は必要ですか?

必要です。 警察庁のデータでも中小企業の被害件数が大企業を上回っており、むしろ守りの薄い中小ほど侵入口として狙われやすい傾向があります。 まずはVPN機器の脆弱性対策、バックアップ、アカウント管理といった基本から着手するとよいでしょう。

Q3.物流システムがランサムウェアに感染すると何が起きますか?

システムが暗号化され、出荷や在庫管理が止まって事業が停止します。 過去には数日から数十日規模で物流が止まり、委託元や取引先にまで影響が波及した事例があります。 個人情報の流出や多額の復旧費用につながるおそれもあるため、事前の備えが重要です。

Q4.物流のサイバーセキュリティで参考にすべき国のガイドラインはありますか?

国土交通省が、港湾分野や物流分野(船舶運航)における情報セキュリティ確保のための安全ガイドラインを公表しています。 あわせてIPAの「情報セキュリティ10大脅威」を確認すると、最新の脅威動向を踏まえた対策の指針にできます。

まとめ

物流業界は、サイバー攻撃のターゲットになりやすい業界といえます。法人・個人を問わず扱う情報が多いうえ、実際に商品の流れも止まってしまうため、被害が大きくなりやすいです。

放置してしまうと、被害が自社だけでなく、取引先全体に広がってしまうため、企業の規模に関わらず、セキュリティ対策は必須です。

まずは感染経路になりやすいVPN機器の見直しやバックアップの整備など、今すぐできる一歩から始めてみましょう。 自社の対策に不安があり、対策の見直しを検討している場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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