「ランサムウェアって実際に支払った企業はあるんだろうか?」
「支払ったとして無事解決するのか知りたい」
近年、ランサムウェアによる被害が報道されるケースは増えています。
実生活への影響もあるため、上記のような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
とくに企業で情報システムの担当をしている方は、他人事ではありません。
そこで、この記事では次の内容を解説します。
【この記事でわかること】
・ランサムウェアの身代金支払いの実態
・支払い・被害事例
・ランサムウェアの被害を防ぐ対策
ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃は、企業の規模に関わらず、被害に遭う可能性があります。
ぜひ今回の記事をきっかけにサイバーセキュリティ対策を見直してみてください。

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ランサムウェアの身代金支払いの実態|日本の最新統計
まず前提として、ランサムウェアの身代金がどれくらいの割合で支払われているか、統計データを確認しておきましょう。
代表的な調査と、日本特有の傾向を整理します。
【この章でわかること】
・日本は「身代金を支払わない国」
・日本の支払い率は43.9%
日本は「身代金を支払わない国」
日本は基本的に身代金の支払いには応じない国として知られています。
その理由は、以下の3つです。
企業文化として「身代金支払い=犯罪助長」という認識が根付いている
警察庁は一貫して「身代金の支払いは推奨しない」と公表しており、企業もその方針に沿いやすい環境があります。
警察・専門機関との連携意識が比較的高い
攻撃を受けた際に警察やJPCERT/CCへ相談するルートが確立されつつあります。
JPCERT/CCは、国内のサイバーセキュリティインシデント(不正アクセス、ウイルス感染等)の報告受け付け、技術的支援、注意喚起を行う中立的な組織です。
サイバー保険の特徴が欧米と異なる
欧米ではランサムウェア保険や特約など、サイバー攻撃に対する保険が発達している傾向にあります。
一方日本では、「立て直す保険」が主流になっています。
欧州とは保険に対する考え方が異なることも、日本でランサムウェアの支払い率が低くなっている要因です。
日本の支払い率は43.9%
JIPDECが2026年1月に実施した「企業IT利活用動向調査2026」があります。
このデータをもとに算出すると、感染被害を経験した企業のうち身代金を支払った割合は約43.9%となります。

計算式は次のとおりです。
支払い率 = 20.1%(支払った企業合計) ÷ 45.8%(被害にあった企業) =43.9%
支払い率自体は年々減少しています。
| 調査年 | 支払い率(感染企業) |
|---|---|
| 2024年1月調査 | 約57.0% |
| 2025年1月調査 | 約49.6% |
| 2026年1月調査 | 約43.9% |
一方で、「支払わずに復旧できなかった」割合は10.5%から13.0%へと増加しています。
払わない選択をとる企業が増えても、バックアップや復旧体制が整っていなければ結果的にデータを失うリスクがある点には注意が必要です。
万一ランサムウェア被害に遭った際、冷静に対応するために、自社のセキュリティ対策は定期的に見直してみてください。
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中小企業のサイバーセキュリティ対策を、1冊に

「何から始めれば」と調べてみても専門用語ばかり。
最低限おさえたいポイントをこの1冊にまとめました。

この資料でわかること
- 中小企業のサイバー攻撃リスク
- 情報漏えい、踏み台攻撃被害を防ぐ対策の基本
- 放置すると起こる実際の被害事例
- 自社の弱点がわかる15項目のチェックリスト
支払いが確認・報道された身代金支払い事例【海外3選】
海外では議会証言・CEO公式声明・報道によって支払い金額が判明しているケースが存在します。
【この章で紹介する事例】
・コロニアルパイプライン
・JBS Foods
・CWT Global
コロニアルパイプライン(2021年)|CEO自らが440万ドルの支払いを認めた事例
2021年5月、米国最大級の燃料パイプラインを運営するコロニアルパイプラインがランサムウェア攻撃を受けました。
米国東海岸向けの石油・ガス供給が最大6日間にわたって停止し、ガソリンスタンドへの供給不足が社会問題となった事件です。
支払いの事実は、CEOのJoseph Blount氏が米議会での証言で認めたことで判明しています。
【コロニアルパイプライン事件の概要】
・攻撃グループ:DarkSide
・支払い額:約440万ドル(約4.8億円)
・供給停止:最大6日間
・後日談:DOJ・FBIがビットコインを追跡し、約230万ドル相当を回収
参考:米司法省
Blount氏は「国家のインフラへの影響を最小化するため、やむを得ない判断だった」と述べています。
この事例は2つの教訓を残しています。
払っても問題は解決しないこと、そして暗号資産による支払いが追跡不可能とは限らないことです。
JBS Foods(2021年)|食肉最大手が1,100万ドルを支払ったと公式発表
2021年5月下旬、世界最大の食肉加工会社であるJBS Foodsがランサムウェア攻撃を受けました。
アメリカ・オーストラリア・カナダの食肉処理工場が停止し、牛肉・豚肉・鶏肉の出荷に深刻な影響が生じました。
【JBS Foods事件の概要】
・攻撃グループ:REvil
・支払い額:1,100万ドル(約12億円)
・被害内容:牛肉・豚肉・鶏肉の出荷が停止
・影響地域:アメリカ・オーストラリア・カナダの食肉処理工場
参考:CNBC
支払いの事実は、CEO Andre Nogueiraが公式声明において1,100万ドル(約12億円)の支払いを認めたことで確認されました。
「事業継続を優先し、予防的措置として支払いを決断した」というのが公式の説明です。
払った後に安全になったかというと、そうではありません。
REvilグループはその後も活動を続け、情報漏洩リスクが消えたわけではありませんでした。
CWT Global(2020年)|交渉チャットが流出し約450万ドルへの減額支払いが判明
2020年7月、米国の大手旅行管理会社CWT Globalがランサムウェア攻撃を受けました。
この事例が注目されたのは、攻撃者との交渉チャット記録がインターネット上に流出したためです。
【CWT事件の概要】
・攻撃発生:2020年7月
・当初の要求額:1,000万ドル
・最終的な支払い額:約450万ドルへ減額で合意
・判明の経緯:攻撃者との交渉チャット記録が流出
参考:Dark Reading
この事例から読み取れるのは2点です。
交渉によって要求額を下げられる場合もあること、そして交渉の記録そのものが漏洩するリスクがあることです。
海外企業のランサムウェアの支払い事例を見ると、基本的には「支払いに応じない」対策を考える必要があるとわかります。

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国内の有名なランサムウェア被害事例と支払い状況【7選】
国内企業の場合、身代金の支払い有無を公式に公表するケースはほとんどありません。
しかし、有名な被害事例を把握しておけば、事前の対策に活かせます。
そこでこの章では、主要な事例をまとめました。
【この章で紹介する事例】
・KADOKAWA
・小島プレス工業
・アスクル
・大阪急性期・総合医療センター
・つるぎ町立半田病院
・名古屋港
・岡山県精神科医療センター
KADOKAWA(2024年)|支払いの有無は公式未発表
支払い状況:公式未発表(支払いの有無について公式コメントなし)
2024年6月、出版・メディア大手のKADOKAWAがランサムウェア攻撃を受けました。
攻撃者は「BlackSuit」グループとされています。
【KADOKAWA事件の被害概要】
・動画サービスが長期にわたって停止した
・従業員・クリエイター・取引先などの個人情報が漏洩したことを公式が確認した
・グループ会社を含む複数のサービスに影響が及んだ
・判明の経緯:攻撃者との交渉チャット記録が流出
参考:日本経済新聞「KADOKAWA、25万人の個人情報漏洩 N高生の学歴など」
身代金の要求額については、一部報道で言及があるものの、KADOKAWAからの公式発表はありません。
この事件が改めて示したのは、大手企業でも「攻撃を受けてから対応する」のでは遅いということです。
小島プレス工業(2022年)|支払いの有無は非公表。トヨタ国内全工場が1日停止
支払い状況:非公表(公式発表なし)
2022年2月、トヨタ自動車のサプライヤーである小島プレス工業がランサムウェア攻撃を受けました。
攻撃によって社内システムが停止し、その影響は、取引先であるトヨタ自動車にまで及んでいます。
【小島プレス工業事件の概要】
・直接被害:小島プレス工業の社内システムが停止
・波及被害:翌日にトヨタ国内14工場・28ラインが1日停止
・影響台数:約13,000台にのぼるとされる
参考:読売新聞「【独自】トヨタ工場の停止、ハッカー集団「ロビンフッド」関与…未確認ウイルスのため即復旧を断念」
この事件は、サプライチェーン攻撃の代表的な事例です。
攻撃者は大企業を直接狙うのではなく、セキュリティ投資が相対的に手薄なサプライヤーを入口として利用しました。
自社だけのセキュリティを固めても、取引先が侵害されれば影響は避けられません。
アスクル(2024年)|支払い有無は非公表
支払い状況:非公表
2024年6月、EC大手のアスクルが「Rabbit」を名乗るランサムウェアグループによる攻撃を受けました。
吉岡社長はメディアインタビューで「執拗な攻撃が1か月続いた」と証言しています。
【アスクル事件のポイント】
・攻撃グループ:Rabbit を名乗るグループ
・攻撃の特徴:約1か月にわたって執拗に続いた
・主な影響:EC・物流サービスに影響
・支払い状況:非公表
参考:日本経済新聞「サイバー攻撃受けたアスクル、全容解明になお時間 動向まとめ読み」
この事件が示したのは、EC・物流業界が新たな標的になっているという傾向です。
在庫管理・受注・配送のシステムが停止すれば、直接的な売上損失と顧客離れにつながります。
「システムが止まると困る」という業態ほど、攻撃者に狙われやすい状況といえます。
物流のサイバー攻撃については、以下のページをご覧ください。
大阪急性期・総合医療センター(2022年)|身代金の支払いを拒否して復旧
支払い状況:身代金の支払いを拒否したと公式調査報告書で確認
2022年10月31日、大阪急性期・総合医療センターの電子カルテシステムに障害が発生しました。
調査の結果、給食業務を委託されていた事業者側のVPN機器の脆弱性をを突いたサプライチェーン攻撃と判明します。
【大阪急性期・総合医療センターの被害規模】
・緊急性の低い手術・外来診療を一時停止した
・基幹システムの再開まで43日間を要した
・全体的な復旧には73日間かかった
・復旧費用および逸失利益は総計で十億円規模とされる
参考:読売新聞「サイバー攻撃受けた大阪の病院、ウイルス侵入招いた複数の業者と10億円で和解」
同センターは身代金の支払いを拒否し、バックアップを使った復旧を選択しました。
最終的に被害の原因となった複数の民間事業者が、センターを運営する大阪府立病院機構に計10億円の解決金を支払い、和解したとされています。
つるぎ町立半田病院(2021年)|身代金の支払いを拒否。復旧費用は約2億円
支払い状況:身代金の支払いを拒否。
国内で最初に広く知られた大規模医療機関へのランサムウェア攻撃事例です。
2021年10月31日の未明、院内のプリンターから英語で書かれた身代金要求文が出力されていることが発見されました。
調査の結果、LockBit 2.0への感染が確認されています。
【つるぎ町立半田病院の被害概要】
・電子カルテが約2か月間使用不能となり、紙カルテでの対応を余儀なくされた
・通常診療の再開は2022年1月4日まで不可能だった
・復旧費用として約2億円をかけた
・VPN装置のパッチが未適用だったことが侵入経路として確認された
参考:日本経済新聞「身代金払わず2億円で新システム 徳島サイバー被害病院」
注目すべき点は、ベンダーから脆弱性対応の案内が届いていたにもかかわらず、病院側で対処されていなかったことです。
技術的な問題だけでなく、組織的な情報管理・パッチ適用の運用体制に問題があったと報告書は指摘しています。
名古屋港(2023年)|身代金の支払い有無は非公表。コンテナターミナルが3日間停止
支払い状況:非公表
2023年7月、名古屋港統一ターミナルシステム(NUTS)がLockBit 3.0による攻撃を受けました。
コンテナの搬出・搬入が完全に停止し、3日間にわたって業務が停止しました。
国内最大の貿易港だけに、その影響は港の外まで広がっています。
【名古屋港事件の概要】
・攻撃グループ:LockBit 3.0
・直接被害:コンテナの搬出・搬入が3日間停止
・波及被害:自動車メーカーなど複数企業の物流に影響
・支払い状況:非公表
参考:読売新聞「名古屋港システム停止、脆弱なVPN狙われたか…最新「修正プログラム」適用せず無防備状態」
港湾・空港・電力・交通などの社会インフラが狙われる、「重要インフラへの攻撃」の典型事例として記録されました。
岡山県精神科医療センター(2024年)|支払い有無は非公表。最大約4万人の患者情報が流出
支払い状況:非公表
2024年5月19日、岡山県精神科医療センターのシステムに障害が発生しました。
翌20日にランサムウェア攻撃と特定され、仮想サーバ23台の暗号化が確認されます。
6月7日には患者情報最大約40,000人分の流出が判明しました。
【岡山県精神科医療センター事件の概要】
・攻撃の発覚:2024年5月19日
・直接被害:仮想サーバ23台が暗号化
・情報流出:患者情報 最大約40,000人分
参考:読売新聞「岡山県精神科医療センターにサイバー攻撃…最大4万人分の個人情報流出の可能性」
2025年2月に公表された調査報告書では、根底にある問題として人的・組織的な要因が挙げられました。
具体的には、パスワード管理の甘さ、権限設定の不備、セキュリティ教育の形骸化などがあげられます。
医療関係は、個人情報や命に関わることから、サイバー攻撃の被害に遭いやすい業界です。
医療関係のサイバー攻撃被害については、以下のページも参考にしてください。
▶ 病院へのサイバー攻撃の事例一覧|日本で起こった実例と対策を紹介
ランサムウェアによる「二重恐喝」の仕組み
上記の事例を通じて、近年の攻撃の主流が「二重恐喝」であることが浮き彫りになっています。
二重恐喝とは、2段構えで金銭を要求する手口です。
【二重恐喝の2つの脅迫】
・第一の恐喝:データを暗号化し、復元のための身代金を要求する
・第二の恐喝:盗んだデータを公開すると脅す
たとえ暗号化解除のための身代金を支払っても、「データを公開しない」という保証は犯罪者が握っています。
支払い後にデータが公開されたケースも確認されており、支払いによって問題が完全に解決するとは限りません。
そのため、「支払えば解決する」という選択肢は最初から外しておきましょう。
サイバー攻撃36種類を、6つの型で理解!
世の中に数多くあるサイバー攻撃を、ピックアップ

「サイバー攻撃ってどんなものがあるの?」種類が多すぎて把握できない。
そんな方に向けて、大まかな特徴をまとめました。

この資料でわかること
- 攻撃者の目的(なぜ狙われるのか)
- サイバー攻撃36種類を6つに分類した全体像
- 型ごとの「手口・被害・具体的な対策」
- 押さえたい4つの対策の全体像
身代金を支払うとどうなるか|4つのリスク
身代金を支払うとどうなるのか。
あらかじめ把握しておくと、いざというときに適切な対応がとれます。
支払いが引き起こす具体的なリスクを、まず一覧で見ておきましょう。
【この章で紹介するリスク】
・復旧が保証されない
・再攻撃のターゲットになる
・支払っても二重恐喝で追加要求が続く場合がある
・制裁対象グループへの支払いは法律リスクを伴う場合がある
復旧が保証されない|支払っても復旧できないケースが12.6%
JIPDECによると、ランサムウェア被害に遭って、身代金を支払ったものの、復旧できなかった企業もあります。
| 【調査結果】 ランサムウェア被害企業の20.1%が身代金を支払った一方、そのうちの12.6%はデータを復旧できなかった |
支払い後に復旧できない理由は主に2つです。
【払っても復旧できない2つのケース】
・鍵を渡さない:金銭を受け取った後に姿を消す
・鍵が機能しない:復号ツールに不具合があり、暗号化を解除できない
「払えば返ってくる」と期待して支払いを決断しても、4件に1件は取り返せません。
さらに支払った金額も戻らないため、最悪の場合、「金も失い、データも失う」という結果になります。
再攻撃のターゲットになる|「払う企業」と認定されリストに載る
「ここは払う」と認定された企業は、継続的な攻撃ターゲットになるリスクがあります。
1回払えば終わりではなく、むしろ次の攻撃を呼び込む可能性があるという点は、支払いを検討する際に注意すべきリスクです。
支払っても二重恐喝で追加要求が続く場合がある
「二重恐喝」の構造上、暗号化解除の身代金を払っても、「データを公開する」という要求が別途来る場合があります。
支払いが次の支払いを呼ぶ構造です。
一度払うと「払い続ける」サイクルに入ってしまうのが二重恐喝の怖さといえます。
こうした変化を踏まえると、支払いによる解決は短期的にすら有効でなくなりつつあるといえます。
制裁対象グループへの支払いは法律リスクを伴う場合がある
REvilをはじめ、米国財務省OFACの制裁リストに掲載されているランサムウェアグループが複数存在します。
こうしたグループへの支払いは、日米間で取引のある企業にとって米国法上の制裁リスクを伴う場合があります。
支払いを検討する前に、押さえておきたいポイントです。
日本でランサムウェアの身代金支払いは禁止されているか|法律を解説
「払うのは違法なのか」という疑問をお持ちの方も多いはずです。
そこで、この章では以下の内容を紹介します。
【この章で紹介する内容】
・日本の現行法では身代金支払いを直接禁止する規定はない
・米国の法律に触れる場合がある
・支払い前に必ず警察・専門機関へ相談する
日本の現行法では身代金支払いを直接禁止する規定はない
刑法・サイバーセキュリティ基本法において、「ランサムウェアの身代金を支払ってはならない」と定める条文は存在しません。
支払い行為そのものが直ちに犯罪となるわけではありません。
ただし、以下の点には留意が必要です。
【支払いにあたって留意すべき点】
・犯罪収益移転防止法・組織的犯罪処罰法の観点から、支払い内容によっては問題となる可能性がある
・支払いが犯罪者グループへの資金提供になるという、社会的・倫理的な問題もある
・警察庁は「身代金の支払いは推奨しない」と一貫して公表している
出典:警察庁「ランサムウェア被害防止対策」
法律上は違法でなくとも、支払いは問題を解決せず、再攻撃を招きます。
この点を考えれば、支払わない方向で検討するのが現実的です。
米国の法律に触れる場合がある
ここで注意したいのが、米国の法律です。
日本の現行法では身代金の支払い自体は違法ではありません。
しかし、同じ支払いが米国の法律には触れてしまう可能性があります。
理由は、支払った相手が米国財務省OFACの制裁対象になっているおそれがあるためです。
しかも、支払いを検討する段階では「相手グループがどこか」を特定するのが難しいケースも少なくありません。
制裁対象と気づかないまま支払ってしまうと、以下のようなリスクが生じ得ます。
| 【制裁対象グループへ支払った場合に生じ得るリスク】 ・米国法上「制裁違反」に問われる可能性がある ・OFACは厳格責任のため、制裁対象と知らなかった場合でも民事責任を問われ、民事制裁金を科されることがある ・日米間で取引がある企業や米国のシステムを使う企業は、意図せず米国法の適用範囲に入る |
日本の法律だけを見て「違法ではない」と判断すると、思わぬところで米国法のリスクを踏む可能性があります。
そのため、ランサムウェアへの支払いに応じないような対策を講じましょう。
支払い前に必ず警察・専門機関へ相談する
ランサム被害を受けた際は、一企業、一個人で判断するのではなく専門家に相談しましょう。
相談先として押さえておきたい機関は以下のとおりです。
【被害時の主な相談先】
・警察庁サイバー犯罪相談窓口
・IPA(情報処理推進機構)
・JPCERT/CC
これらの機関への相談は、後の法的手続きや保険請求においても証拠として役立ちます。
被害を受けた場合の初動対応|支払いを判断する前にやるべきこと
感染確認から72時間以内の行動が、被害の拡大と復旧コストを大きく左右します。
支払いを検討する前に、まず以下の手順を踏むことが不可欠です。
【被害発生後の初動3ステップ】
・ステップ①:感染端末をネットワークから即座に切り離す
・ステップ②:警察・専門機関へ報告し、証拠を保全する
・ステップ③:バックアップからの復旧可能性を確認する
ステップ①|感染端末をネットワークから即座に切り離す
ランサムウェアは、侵入した端末から社内ネットワークを経由して横展開(ラテラルムーブメント)します。
感染を確認した段階、または疑いがある段階で、直ちに以下を実施してください。
【感染端末の隔離手順】
・有線LANケーブルを物理的に抜く
・Wi-Fiをオフにする
・ネットワーク接続が必要な他の端末も可能な限り隔離する
「シャットダウンすれば止まる」と思って電源を落とすのは誤りです。
シャットダウン処理の際に暗号化が加速するケースもあるため、まずネットワーク切断を優先してください。
ステップ②|警察・専門機関へ報告し証拠を保全する
発覚後できるだけ早く、専門機関への通報・相談を行いましょう。
また通報と並行して、調査に備えて証拠保全を行ってください。
感染した端末のメモリ・ログ・タイムスタンプを消去せずに保持することが重要です。
後のサイバー保険請求・法的対応・原因究明のために、記録が必要になります。
ステップ③|バックアップからの復旧可能性を確認する
身代金を支払う前に、まずバックアップからの復旧可能性を確認します。
ここで確認すべきポイントは以下のとおりです。
【バックアップ復旧の確認ポイント】
・バックアップが感染しているかどうか
・最後にバックアップを取得した日時
・実際にリストアができるかどうか
バックアップをネットワーク上に置くだけでは不十分です。
オフラインまたは隔離された環境での保管が不可欠といえます。
ランサムウェアの被害を防ぐ事前対策5つ
近年のランサムウェアには、いくつかの特徴があります。
「RaaS(サービス型ランサムウェア)」の普及で攻撃のハードルが下がり、二重〜三重恐喝が標準化し、AIを使ったフィッシングメールの精度も上がっています。
攻撃の裾野が広がるなか、被害を防ぐための事前対策を5つに整理しました。
【被害を防ぐ5つの事前対策】
① VPN機器・OSのパッチを定期的に適用する
② セキュリティソフトで端末を守り、不審な挙動を検知する
③ オフラインのバックアップを定期取得・定期検証する
④ 多要素認証(MFA)でVPN・リモートデスクトップへの不正ログインを防ぐ
⑤ 全従業員へのセキュリティ教育を定期的に実施する
① VPN機器・OSのパッチを定期的に適用する
国内の被害事例の多くで、VPN機器の脆弱性が侵入経路になっていることが確認されています。
対策として、以下を定期的に実施してください。
【パッチ適用のポイント】
・VPNベンダーのセキュリティアドバイザリーを購読し、脆弱性情報を定期確認する
・脆弱性が発表されたら72時間以内のパッチ適用を目標にする
・OSおよび業務アプリケーションのアップデートを自動化または定期スケジュール化する
「ベンダーからの通知を見落とした」「パッチを適用する担当者がいなかった」
こうした組織的な問題が被害を招くケースは多いものです。
運用体制の整備が技術対策と同等に重要です。
② セキュリティソフトで端末を守り、不審な挙動を検知する
ランサムウェアの多くは、従業員の端末(エンドポイント)から侵入します。
そのため、一台一台の端末を守るセキュリティソフトの導入が欠かせません。
【セキュリティソフトで対策できること】
・既知のマルウェア・ランサムウェアの検知と駆除
・不審な挙動の検知による、未知の脅威への対応
・感染時の被害範囲の把握と、初動対応の迅速化
コストを抑えつつ導入したいなら、軽快で検知力の高いESETのようなセキュリティソフトが選択肢になります。
③ オフラインのバックアップを定期取得・定期検証する
ランサムウェア対策でバックアップは必須ですが、取得するだけでは不十分です。
バックアップ自体が暗号化されてしまっては意味がありません。
重要なのは以下の3点です。
| 対策 | 内容 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| オフライン保管・隔離保管 | バックアップをネットワークから切り離した環境に保管する | ネットワーク接続されたバックアップはランサムウェアに同時に暗号化されるリスクがある |
| 3-2-1ルールの適用 | 3つのコピー・2種類のメディア・1つはオフサイト保管 | 単一の保管場所に依存すると、災害や攻撃で一度に失うリスクがある |
| 定期的なリストアテスト | 定期的に実際の復元操作を検証する | テストなしのバックアップは、いざという時に使えないことがある |
バックアップが使える状態にあって初めて、「払わずに復旧できる」選択肢が生まれます。
④ 多要素認証(MFA)でVPN・リモートデスクトップへの不正ログインを防ぐ
VPNやリモートデスクトップへの不正ログインは、国内のランサムウェア感染の主要な経路のひとつです。
パスワードだけの認証では、フィッシングや認証情報の窃取によって突破されるリスクがあります。
多要素認証(MFA)を導入することで、パスワードが漏洩した場合でも不正ログインを防ぎやすくなります。
あわせて、アクセス権限を業務上必要な最小限に絞る「最小権限の原則」を適用することが重要です。
⑤ 全従業員へのセキュリティ教育を定期的に実施する
ランサムウェアの感染経路として、フィッシングメールの添付ファイルやURLは依然として高い割合を占めています。
技術的な対策を整えても、従業員が不審なメールを開いてしまえば侵入を許すことになります。
効果的な教育として、以下を組み合わせてみましょう。
【組み合わせたいセキュリティ教育】
・フィッシングメールの模擬訓練(定期的に疑似メールを送って開封率を計測する)
・インシデント発生時の報告手順の周知(「開いてしまったら速やかに報告する」文化の醸成)
・UTMのURLフィルタリングによる技術的な補完
人の「うっかり」をゼロにするのは難しいものです。
技術と教育を組み合わせて、一つの穴が致命的な被害につながらないよう多層的に守ることがポイントです。

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よくある質問
最後にランサムウェアの支払い事例についてよくある質問を紹介します。
ランサムウェアの支払い率は何%ですか?
調査機関によって異なりますが、世界平均は40〜50%台が目安とされています。 Veeam 2022調査では76%が支払ったと報告されている一方、Chainalysisの2025年報告では支払い総額が前年比約35%減少しており、支払い拒否の傾向が強まっています。 日本はProofpointの15か国調査で世界最低水準の支払い率を記録しています。
KADOKAWAへのランサムウェアの身代金要求はいくらでしたか?
KADOKAWAは身代金の要求額および支払いの有無について公式に発表していません。 一部報道での言及はありますが、本記事では公式に確認できない情報は掲載しません。 公式発表の状況については、KADOKAWAの公式お知らせページをご参照ください。
サイバー攻撃で確認されている身代金の最高額はいくらですか?
報報道ベースで確認されている最高額は、2024年の米国医療大手Change Healthcare(BlackCat/ALPHVによる攻撃)が支払ったとされる約2,200万ドル(約33億円)です。ただし支払い金額は企業が公表しないケースが多く、実態はさらに高い可能性もあります。
日本ではランサムウェアの身代金の支払いは禁止されていますか?
現行の日本法では、身代金の支払いを直接禁止する規定はありません。 ただし、米国OFACの制裁対象グループへの支払いは米国法上のリスクを伴う場合があります。 警察庁は「支払いは推奨しない」との立場を取っており、被害を受けた場合は支払い前に警察や専門機関へ相談することが強く推奨されています。
まとめ
本記事では、ランサムウェアの身代金支払い事例・支払い率の統計・支払いのリスク・法律の立場・初動対応・事前対策を解説しました。
【記事の要約】
・支払い率は世界平均で40〜50%台だが、2024年以降は減少傾向にある
・支払っても復旧できないケースが24%存在する
・支払いが確認された事例は海外が中心で、国内企業の多くは支払いの有無を公表していない
・払ったとしても、再攻撃・二重恐喝・法律リスクという新たな問題が生じる
「払うか払わないか」を迷う前に、払わずに復旧できる体制を作ることが重要です。
バックアップが使える状態にある、セキュリティソフトで端末を守れている、パッチが当たっている。
これらが揃っていれば、支払いを迫られる状況に追い込まれにくくなります。
まずは、自社のサイバーセキュリティ対策の現状を把握するところから始めましょう。
また、UTMやセキュリティソフトの導入について検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。




